楽曲評論家クソDDのアイドル三十七房

アイドルの話しかしません。

『リップヴァンウィンクルの花嫁』を見てない人は2016年何してたの?

年に1本はこういう映画あるんですよ。2015年でいうと「シェフ ~3つ星フードトラック始めました~」とか。思い出しただけでキューバサンド食べながらジオタグ辿りたくなるわ。

 

その内のひとつが2016年は「貞子vs伽椰子」とかになるんだろうなーと個人的には思う。これについては以前ちゃんと話をしたつもりなのでこっちを読んでほしい。

これと同じぐらい僕が推したいのが、「リップヴァンウィンクルの花嫁」。

2016年の映画といえば、まあ誰が何と言おうと「君の名は。」を上げる人が大多数だろう。結局去年のうちに僕も3回見たし、別に全然面白い映画だと思うし単純にあれだけ売れたことそのものがすごい。

だって「もののけ姫」より売れたんだよこの映画。瀧くんと三葉の2人だけであっという間にサンを救えるレベル。アシタカじゃなくて瀧くんのプロポーズ受けたほうがサンも将来設計しやすいと思うぞ。腕に呪いを飼う男より新宿在住のイマドキ男子瀧くんのほうが絶対周りの女子からも「え~~いいな~~」って言ってもらえるよ。

 

しかし「君の名は。」が十分売れていてしかも面白い映画だということはもう大体の人が知っているので今更ここでプッシュしたところであんまり意味がないと思う。それよりも黒木華岩井俊二監督の素晴らしさを僕は声を大にして伝えたい。

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結婚式の代理出席をなんでも屋に頼んだり浮気の罪を旦那になすりつけられたりよくわからない人と2人暮らしするだけで月給100万円とか、あらすじを説明してもよくわからないと思うのでもうとにかく観てほしい。

上映時間3時間ぐらいあったのに飽きさせない展開のすばらしさと雰囲気作りに脱帽。3時間って結構長いと思うけど全然間延びがなかった。

ロード・オブ・ザ・リング」シリーズを監督する前のピーター・ジャクソンに見せてやりたい。ただただ長えよあんたの映画。おもしろいけど。

 

岩井俊二監督といえば現実と虚構の使い手というイメージがすごく強い。

花とアリス」の印象が強いからなのかもしれないけど、この作品の場合は特にそれが強烈に印象に残った。なんでも屋の安室と接する場面はリアルな現実で、一つ一つのものごとだったり言葉だったりにどぎついリアリティがある。

逆に同居人の真白さんと接するときは映像もなんだかぼやけてて、マジの虚構世界っぽい雰囲気がある。

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(何でも屋と接する「現実」の世界←→いかにも「虚構」っぽい真白さんとの同居部屋)

 

この二つの世界観を駆使して3時間の枠の中で人間ドラマともホラーともとれるやり取りがあれこれ展開されていく映画。

スリードもあったりちょっと叙述トリックっぽい要素もあったりして。これ以上に完成された物語を多少長尺とはいえ一つの枠の中に収めた映画はなかなかない。

 

タイトルの「リップ・ヴァン・ウィンクル」っていうのは、ワシントン・アーヴィングの小説でありそれに出てくる主人公の名前。

この小説はリップ・ヴァン・ウィンクルが迷い込んだ森の中で見知らぬ人と酒を飲んでいるうちに眠ってしまい、気が付いたら周りに誰もいなくなっていた挙句、家に帰ると20年もの時がたっていた」といういわゆる浦島太郎的なイマイチ学びのない物語だけど、この映画見終わったら「ああだからリップヴァンウィンクルなんだ」とか「予告編で被ってたあのマスクみたいなのってそういう意味か」ってすとんと腑に落ちる感覚がめっちゃいい。

気になった人は“映画を観る前に”読んでみてほしい。

短編集だからサクサク読めるよ。

スケッチ・ブック(上) (岩波文庫)

スケッチ・ブック(上) (岩波文庫)

 

 

黒木華さん大好きなんですよ。あの絶妙な幸の薄さ。薄すぎず濃すぎず。ちょうど1週間ごとに良いことと悪いことが交互に起こりそう。で自分の人生を振り返ってみた時に6:4ぐらいの比率で悪いことのほうが多かったなあ、やっぱり私ってそうなんだよなあとか苦笑しながら思っててほしい。

そして結婚相手も決して素敵すぎない男性を選んでほしい。そしてしっかり旦那に尽くしているにもかかわらず旦那に蔑ろにされつつ、それでも私はこの人と暮らしていくしかないんだと強い決意をするも数日ですぐ揺らいでほしい。なおこの物語はフィクションです。現実の黒木華さんには絶対に幸せになってほしい。

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そんな最高に面白くもあり、怖くもあり、不思議な映画、「リップヴァンウィンクルの花嫁」。まだ見てない人は2017年どころか2016年に乗り遅れてると思う。今すぐBlu-rayを買って最高画質で観てくれ。