楽曲評論家クソDDのアイドル三十七房

アイドルの話しかしません。

『アイドルに本当に必要なのは「笑顔」か「涙」か』論

エビ中にハマった。それはもうハマった。

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先月出たこのベスト盤「中卒」「中辛」をほんの軽い気持ちで聴いてからというもの、今の僕の生活の9割はエビ中が占めている。ちなみに残りの1割は「じゃがりこ 塩とごま油味」に占められている。なんだアレ。革命だぞ。

 

正直ナメていた。ももクロにがっちりハマっていた2011~2012年ごろを最後に、スターダスト系列からは遠く離れたドルヲタ人生を送っていた。だからアイドルヲタクを自称しておきながらエビ中をまともに聴いたことがほとんどなかった。今思えばそんな自分をアイスピックでめった刺しにしたい。何で今まで聴いてこなかったんだ。アンテナが低すぎる。そんな低いアンテナなんか折ってしまえ。洗車の時に邪魔になるだけだ。

反省の証としてこの1週間の間に過去にリリースされたエビ中のCDを手あたり次第買いそろえて全曲聴いたしBlu-rayも3枚観た。

いろんな曲を何回も聴き込んでエビ中熱がキンキンに熱くなっている今の状況で「エビ中の何が良いか」なんてことを話し出したら時間も行もいくらあっても足りないので、今回は心の中に留めておくとして、今回はそんなエビ中Blu-rayや番組を見ていて感じたことについて考えたい。それが『アイドルに本当に必要なのは「笑顔」か「涙」か』論だ。

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エビ中絡みの映像を見ていてやたら印象に残ったんだけど、エビ中はとにかくよく泣く。メンバー特性も多分にあるだろうがそれにしても何かにつけてよく泣く。当社比120%ぐらいで泣く。

誕生日をお祝いされたらすぐ泣くし、学校の卒業をお祝いされてもすぐ泣くし、音響監督にちょっと厳しいこと言われてもやっぱりすぐ泣くし、極めつけには「魚介類が食べられないメンバー(小林さん)を他のメンバーが気遣ってお寿司じゃなくてラーメンを食べに行った」というエピソードだけで「申し訳ない」と連呼しながら小林さんが泣く。

アイドルが大衆に振りまかないといけないのは「笑顔」であるというのが、いわゆる世間一般論な気がする。非日常の中にある多幸感を提供し続けることが使命というか、「笑顔」というものが包括するプラスのイメージを提供し続けなければいけない存在だった。それに対する「涙」というのは、どちらかといえばマイナス。正負で言えば負のエネルギーだ。「涙」が一元的に全て負であるとは言い切れないが、一般的に言えばそうである、はずだった。

ところが、そういう風潮が今となっては変わってしまった。アイドルは「笑顔」を振りまく存在であるべきというのは、もう前時代的な考え方なのかもしれない。2010年前後を境に、アイドルビジネスの根本的な売り出し方に変化が起きた。多様化するアイドル、キーワードになったのは「成長過程」というもの。

 

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いかにヲタクにこう言わせるか、というのが当時から今までのアイドル戦国時代におけるポイントだったように思う。ここを強調するためにアイドル界で巻き起こってきたのが、アイドルの裏側・素の姿を惜しげもなく表へ出していこうという風潮だ。

2010年前後で最もバズったアイドルと言えば間違いなくももクロになるだろうが、彼女たちのライブ映像を収録したDVDには往々にしてバックステージドキュメントが収録されていた。個人的に特に印象的だったのが2011年冬のさいたまスーパーアリーナ。そのライブが収録されたDVDの特典映像で、ももクロにとって初となるさいたまスーパーアリーナの客席に1歩踏み入れた途端泣き崩れる5人の姿を、未だに鮮明に覚えているモノノフは少なくないと思う。

紅白出場を目標に掲げたももクロ結成当初、NHKホールの横の道端でストリートライブをやっていたころから追っかけている古参のモノノフなら、感涙を禁じ得ないシーンだろう。そうやってヲタクに対して「よくここまで頑張った」あるいは「ここまで連れてきてあげることができた」と思わせることがポイントだった。そしてその過程において、必要とされるのはキラキラした表舞台の「笑顔」よりも、裏舞台で見られる泥臭い「涙」だった。

そして時は流れ2016年。ももクロの妹分として同じスターダストプロモーションからデビューした私立恵比寿中学のDVD・Blu-rayにも当然もれなくバックステージドキュメントが収録されている。それだけにとどまらず、エビ中の場合は「EVERYTHING POINT」と銘打ったバックステージドキュメントだけの作品もリリースされている。もうすぐその第4弾が発売になる。もちろん予約済みだ。

 

こうやって考えると、今の時代でアイドルがビッグになっていく過程で必要なのは「笑顔」よりも「涙」なのではないかという説がかなり自分の中で有力視され始めた。ただ、「涙」を見せるためには「笑顔」が必要なのだ。負のイメージばかり押し付けられていても暑苦しいだけなので、上手く表舞台の「笑顔」で中和させてあげないといけない。

それ以前のアイドルにとっては表舞台で見せる「笑顔」こそが全てであり、裏舞台を見せるのはある種タブー視されてきた節があった。そこにあえて裏舞台での「涙」という土台を構築することで、その上に乗っかる「笑顔」をより強固に支え、ゆくゆくはアイドルのブランドイメージそのものを向上させてしまうというのが最近のアイドル、とりわけスターダスト界隈のメイン手法であり、自分はまんまとそれにハマってしまったわけだ。現にこれを書いている今、横のモニターで「EVERYTHING POINT3」を流しているが、「メンバーが一人体調不良で出演できない状況だが、シングル曲のライブ初披露をするかどうか」で議論するエビ中メンバーを見て泣いている。

 

だいぶ長くなってしまったが、結局今のアイドルというのはキラキラニコニコ歌って踊っていれば売れるという状況でもないらしい。だからと言って裏でぎゃんぎゃん泣いているところばっかり映しててもダメらしい。泣いてても、ステージでしっかりパフォーマンスができてないと意味がない。逆にステージ上で力を発揮できるグループの、裏舞台の「涙」というのは、ときに「笑顔」以上に強力な武器になる。

 

アイドルというのは、難しい。