楽曲評論家クソDDのアイドル三十七房

アイドルの話しかしません。

吉田凛音を見て「かわいいね」としか言えない大人たちへ。

メラビアンの法則」というものがある。

人に教わった話では、「人が誰かを初対面で判断するときの判断要素のうち、5割以上は見た目などの視覚情報からくるものであり、聴覚情報などを含めると9割以上の割合で人間は他人の印象をノンバーバル情報に頼っている」というのがメラビアンの法則らしい。

小生この世に生を受けてたかだか20数年の若輩者だが、たかだが20数年の間にもいろんな出来事があったよ。彼女にむごい振られ方をして泣いたこともあるし、酒に酔って友達の家のベッドに向かって嘔吐ぶちかましたのに優しく介抱してもらって泣いたこともあるし、好きだった女の子に告白したけど玉砕して傷心ながらに大学内の川辺で夜にアコギぽろんぽろん弾いてたら苦情を言われて、深夜1時に泣きながら土下座したこともある。なんで理系はあんな遅くまで研究棟にいるんだ。てか泣いてばっかじゃねーか。

そんな紆余曲折あるはずの人生を9割以上見た目オンリーで判別されるだなんて馬鹿な話があってたまるか。何とか異を唱えたいと思って個人的にちゃんと調べてみたことがある。

 

ちゃんと調べてみたところ、メラビアンさんは全然そんなこと言ってなかったのだ。正しい意味でのメラビアンの法則とは、「『矛盾があるメッセージを受け取った際に』人が重要視する判断要素のうち、5割以上が視覚情報である」というものだった。

要は、スゲー元気なさそうなのに「楽しいね」って言ってるやつが本当に楽しいか楽しくないかを判別するとき、人が頼るのは「元気なさそう」という見た目の印象だということである。これをメラビアンさんが研究して法則化したのがメラビアンの法則だ。

おいおいおい待ってくれ、聞いてた話と全然違うぞ。俺は別に初対面の人に向かって肩落とし気味に「楽しいね」なんて言ったことないしそもそもじゃあ俺が教えてもらったのはどこの誰が提唱した法則だったんだ。嘘八百教えて人から金巻き上げてんじゃねえぞあの就活セミナーのおっさん。絶対来世で呪う。

 

ともあれ、こういう間違った情報を安易に流布させてしまう人たちのせいでというかおかげでというか、人間というものは人の第一印象をほぼ見た目に頼ることが多い。上で1000字弱連ねた文句のちゃぶ台を自分でひっくり返すようだが、得てして他人の印象とはそういうものだ。

ところが、見た目の印象に翻弄されるがあまり、もっと奥底にある輝きを見つけられないまま立ち去っていく人も多い。そういう人たちに集られているんじゃね?と若干心配になるのが、吉田凛音である。

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かわいい。間違いないんだよな。このかわいさ。剥製にして茶の間に飾りてぇ。

 

「かわいい」で終わってない?

いろんな界隈の人と吉田凛音の話をすると

「あぁ、りんねちゃん。最近話題になってるよね。かわいいし」

だいたいこういうニュアンスの返答が返ってくる。知り合いのドルヲタはたいてい年上の方ばかりなので「アッ、ソッスヨネ」と流すが、心の中ではマウント取ってボッコボコだよボッコボコ。キン肉バスターかけてバズーカで撃ってるよ。アンタどっかに語彙っていう概念置き忘れてきてんぞ。今日行った喫茶店とか本屋に電話してみたほうがいいよ。

確かにかわいいさ。だがこの子の曲をちゃんと聞いてみたことがあるか?

歌が上手いんだ。まずはそこまでちゃんと見てやってくれ。

上手いと言っても別に特徴的な声でもないし特別際立ったテクニックがあるわけでもない。この子の武器は「フラットな歌の上手さ」だ。

よく「これぐらいの子だったらカラオケ上手い子レベルでゴロゴロいるじゃん」っていう人もいる。そいつもマウントでボッコボコだ。よく考えてほしい。彼女はまだ15歳だ。中学3年生。これから待っている楽しい学校生活も青春も甘酸っぱい恋愛も、人生において1度きりの貴重な10代をほぼすべて捨てて、脂ぎったおじさんたちにワーキャー言われるだけのアイドルになってくれと言われて、首を縦に振る女子中学生が日本広しと言えど何人いるだろうか。そしてその子が歌が上手い可能性は何%だろうか。さらに彼女のようにルックスまでイケてる場合に絞るといよいよ何%だろうか。

70~80年代のアイドル全盛期なら露知らず、今はグループアイドル全盛期だ。そう考えると、これだけフラットな歌の上手さと大衆受けするルックスを兼ね備えた15歳のソロアイドルというのはもはや奇跡に近い。天文学的な確率の上に吉田凛音は存在している。あまりにも尊い。尊いなあ。

 

「かわいいし歌が上手い」で終わってない?

だが吉田凛音のすごいとこはまだまだある。いい加減メラビアンの法則は頭の片隅へ放り投げてくれ。

彼女の本当にすごいところ、それは音楽的な「器の深さ」にある。

これはソロ曲ではないが、さっきの曲とまるで別物だ。まあ作ってる人が違うから当たり前と言えば当たり前だが、それでもこんな全く違う色のフィールドに放り込まれてもちゃんと吉田凛音を保っている。

一緒に歌っているのは蒼波純という子。この子はこの子で色々おもしろいんだけど今回は割愛。赤と青を混ぜて紫になったんだなーっていうよりは、この紫は赤と青が混ざってできたものなんだなーって思う感じ。演繹的というか。吉田凛音蒼波純が混ざってるのにそれぞれの形をくっきり残して崩しすぎない。

このひねくれた歌詞にミニマルなリフを乗せた5拍子の曲。一体だれが作ったんだと思ったら案の定大森靖子とサクライケンタか。メンヘラと天才かけ合わせたらえらいことになるな。

 

そして極めつけはコイツだ。

とうとうここまで来たか。「真夏のBeeeeeeaM.」がはるかかなた遠くに感じるほど長い道のりを歩いてきたみたいだが、なおも吉田凛音の形をしている。しかもちゃんと韻を踏める可能性ができるだけ広がる、れっきとしたラップの歌い方をしている。

個人的に今アイドルラップ界隈で一番うまいし一番好きなのはリリスクのminanさんだったりするんだけどな。リリスクの新譜サイコーだったな。minanさん、紫の子ね。

 

リリスクの動画で締めてしまって言うのもなんだが、吉田凛音は何をやらせても上手くハマる。彼女の真のすごさはここにある。15歳という幼さゆえの部分もあるだろうが、それでもここまでいろんなことをやらせてもイメージが変わらないアイドルというのはそうそういない。吉田凛音だからこそどんなジャンルにも癖がなく当てはめることができるが、仮にもし似たようなことをやろうとしてBABYMETALが急にやたらテクノじみた曲調で「萌え萌え~」みたいな曲を持ってきたら多分全世界のメタラーは「無理だ!」と叫んだ後爆散して死ぬ。

歌も上手いしルックスもいいし音楽性の器も深い、そんな今最もアツいソロアイドル、吉田凛音。どうか表面的なところだけでなく、しっかり奥底までかみしめて味わってもらいたいアイドルである。あともう二度と嘘メラビアンの法則を流布する悪い大人が現れませんように。