楽曲評論家クソDDのアイドル三十七房

アイドルの話しかしません。

「本当に怖いのは、ゴジラではなく人間ね」

毎度のことながら、多分にネタバレあり。未視聴の方はご注意。

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見てきたので、いろいろと語りたいことを語る。

出来る限り、予告編以外の情報は何も仕入れずに行ったんだけど、結果的に正解だったかな。全体的に'54年の初代「ゴジラ」と「エヴァ」を8:2で割った感じの印象だった。ところどころというかほぼ全体的にエヴァのエッセンスを盛り込んでたし、ヤシオリ作戦のくだりとかはもう完全にヤシマ作戦だったな。BGMもヤシマ作戦のやつだったし。

 

エヴァとのコラボ要素はおまけみたいなもんだとして、映画の全体的な構成は初代「ゴジラ」に準拠してる部分が大きい。人類の前に初めて姿を現した巨大不明生物ゴジラと、それに立ち向かう人間、という構図。これまでの30作近いゴジラシリーズの中では、多分2000年の「G消滅作戦」以来じゃないかな、初代「ゴジラ」の設定を踏まえてないゴジラ映画は。

だからメッセージ性も、初代「ゴジラ」に含まれていたものをリブートしてもう一回世に送り出そう、という庵野さんの意図が見え隠れしていた。これはマジで最高。

劇中とある人物が「本当に怖いのは、ゴジラではなく人間ね」っていうセリフを吐くんだけどまさにこれこそが結論めいてるというか。ゴジラはそもそも人間が水爆実験を繰り返したことによって住処を追い出され、放射能を帯びた状態で人類の前に姿を現す「水爆の落とし子」として描かれてきた怪獣であり、そこには「人間の愚かさ」「核兵器の恐ろしさ」がイコールで結ばれてきた。

ゴジラと人間との攻防、そして初代ゴジラにとどめを刺したオキシジェン・デストロイヤーの登場…。こういうやりとりの中に、力には力を、さらに強大な力には、それよりもさらに強大な力をと倍々ゲームで繰り広げられる「戦争」そのものの愚かしさを本田猪四郎監督は描いていた。

そして今回の「シン・ゴジラ」。結局ゴジラを生み出したのは放射性廃棄物を海中投棄した人間で、ゴジラはやむなく放射性物質を摂取して生きていける形へと急激な変化を遂げた、というまさに初代「ゴジラ」そのものな設定。シリーズ開始から62年たって、やっとこの作品で「ゴジラ」が一回りしたような気がした。

あとやっぱり庵野さんっぽいなと思ったのは、やっぱり出てきた神格化!!これも劇中のセリフだけどゴジラは人間に危害を及ぼす災厄であると同時に、生物の新しい進化の可能性を示す福音でもある」っていうセリフ。このセリフかなりぞわっときた。捉え方エグすぎない?確かに体内に原子炉をもって核分裂を行動エネルギーにする生物なんて今いないけど、いずれ地球上の生物はそうなる運命にあるみたいな言い方されて結構ドキッとした。「福音」って庵野さんっぽいな~。

 

それから、初代「ゴジラ」を彷彿とさせるのがエンディング。初代「ゴジラ」は、芹沢博士がオキシジェン・デストロイヤーを使ってゴジラを葬ったあとの海上で、山根博士が「あのゴジラが最後の1匹とは思えない」っていう意味深な発言をして終わっていく。ここにこそ僕は学びがあると思っていて、「せっかくゴジラを倒しても、人間が原水爆実験をやめなければきっと世界のどこかでまたゴジラが現れて人類を蹂躙するだろう」っていう人類に対する警鐘になってる。

今回も形こそ違えど、ゴジラの襲撃で放射能に汚染されて首都としての機能を失った東京をどう復興させていくかとか、ゴジラを倒したからハッピーエンドじゃないっていうのが結構大きい気がして。その続きとか、10年後20年後どうなっていくのかっていうところまで想像させられるような広がりがあった。

こないだ「インデペンデンス・デイ / リサージェンス」も見たけど、同じSFパニック映画とは思えないレベルでエンディングの出来が違った。「エイリアンが襲撃してきたけどみんなでひとつになって倒したよ!!!やったー!!!ハッピーエンドだね!!!」みたいな乱暴な終わり方されると「ハァ?」ってなってしまうのは僕がゴジラを見て育ってきたからだと思う。

思い返せばハリウッド第1作目の「GODZILLA」もそんなエンディングだったなと。「ゴジラたおしたよ!やったー!」みたいな。最後に卵が孵るカットあったけど、あれを直接的に見せるとこというか、セリフだけで示してその後の広がりを持たせないっていうのがアメリカっぽいというか、お国柄とでもいうべきなのかなぁ。全然カタルシスを感じない。

 

という感じで、シリーズファンにとってもゴジラ初見の人にとってもめちゃめちゃ楽しめる映画だな~っていう感じだった。最初ゴジラ出てきた時の見た目があれ?アンギラス?って思う感じだったり、石原さとみさんのキャラ謎すぎて最初ちょっと笑ったり、「無人在来線爆弾」っていう費用対効果ガン無視の最終兵器投入しだしたりとか、市川実日子さんのキャラがかなりおれにハマりすぎててやばいとか、人それぞれで楽しめる場面がたくさんありそう。夏休みにはぜひ。