楽曲評論家クソDDのアイドル三十七房

アイドルの話しかしません。

「貞子vs伽椰子」がなぜ2016年No.1映画なのか

いやー、どうしても話したい。この映画について。

ネタバレありますのでご注意ください。

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映画『貞子vs伽椰子』予告編

間違いなく今年No.1の映画だと思う。まだ下半期あるけどもう決めちゃっていい。

「リング」シリーズの貞子と「呪怨」シリーズの伽椰子をぶつけてみようというアベンジャーズ的な発想から生まれた映画。いや、アベンジャーズって共闘か。まあいいや。

そもそも「リング」と「呪怨」ってJホラーというくくりでいうと同じですけど、細部の設定見ると当然ながら違いがあるんですよね。貞子の呪いは結局仮想空間内のウイルスだっていう話になるし、伽椰子はただただ家に関わった人を殺戮し倒すスタンダードなパワー型呪いになるし、タイプの異なる2つの呪いをどうやってぶつけるのかなーと思って見たんですが、すっごい画期的で。

 

まず、なぜか今まで誰も発想し得なかった「お祓いに行く」という概念。これがまずあまりにも斬新。結果お祓いする手前のところでやられちゃうんですけど、その発想って確かに今までなかったなと。むしろなんで今まで誰もやらなかったの?と。海外映画だと霊媒師をぶつけるみたいな展開はたまにありますけど、一種ガラパゴス的な発展をしてきたJホラー界では避けられてきたことなのかもしれない。

あと伽椰子の家の中で呪いのビデオを見るっていう展開が最高にアツくて。冷房ガンガンの部屋で毛布にくるまって寝るぐらいの贅沢さですよね。伽椰子の呪いと貞子の呪いをぶつける方法として出てくるんですけど、言っても貞子と伽椰子ってJホラー界の2大巨頭たるキャラクターですから、そこがぶつかり合うところにやっぱりアベンジャーズ感というか、ジャンプ漫画感がありましたね。

 

なんかB級映画」っていう言い回し=レベルの低い映画・低予算で作ってる映画っていう扱いが何となく固定概念としてありますけど、僕は絶対そうじゃないと思うんですね。映画っていうものを文化として、高尚なものとしてあらゆる角度から突き詰めたうえで完成させた映画がそもそもA級映画だと思うんです。映像作品というよりはむしろアート寄りというか。それに相反する形でのB級映画こそが、エンタメ映画の真骨頂だと思います。

さっきも言ったように、90年代後半から00年代初頭にかけてJホラーがガラパゴス的な進化を遂げはじめる走りとなった作品が「リング」呪怨」であって、そこから日本ならではの怖さとか、驚かせ方っていうものが完成されていくにしたがってJホラーは最近アートに寄りすぎてたように思うんです。現実に存在し得ない霊的なものを扱うジャンルであるがゆえに、現実にありえようのないことだからこそ娯楽性・エンタメ性は絶対必要なんですよ。

その点「貞子vs伽椰子」はちょうどいい位置にいるなーと。Jホラーとして確立された怖さ表現をクレバーに使いつつも、やっぱりどこか笑えてしまう。「怖がらせ方」のアーティスティックさと、「笑える」エンタメ要素を両方取り入れてる。これはここ最近のJホラー作品にはなかった印象でした。だからこそ「貞子vs伽椰子」はまぎれもないB級映画ですよ。特B級です。

見てみたらわかると思うんですけど、やっぱり怖いとこは怖いです。でもずっと面白いです。ラスト10分は笑いをこらえるのに必死なぐらいおもしろかった。映画館結構人いっぱいいましたけど、本気で怖がってる人と爆笑しながら見てる人と半々でしたね。終わって出た後に「なんか笑いながら見てる人いたけど、あれどういうことなの…?」って話してる女の子を見た時に、あぁ間違いねえわこの映画最高だってなりました。

 

貞子と伽椰子っていうキャラクターが10年代初頭からいろいろな場所で消費され続けてきて、もうぶっちゃけどっちもそんなに体力残ってないと思うんですよね。だからこそここで2人の残ってるパワーをぶつけあって、アート方面に寄りすぎてたJホラーに一石を投じて、ちょうどいいバランスのところまで引き戻してきた映画っていうイメージがあります。だからこそ今年No.1なんですよねー。一つのジャンルの今後を占うっていう作品はもう多分今年出てこないと思う。超重要な作品。

マジでおもしろかったですねー。近々2回目見に行きますけど、もう1回「リング」シリーズと「呪怨」シリーズ全部見返してから行こうと思います。そのほうが楽しい。

 

全然関係ないですけど昨日は「クリーピー 偽りの隣人」見てきました。香川照之さんの変人演技見るだけでおなか一杯になる映画でした。あの人ほんとすごい。一つ一つの所作から何から完成されきってて「そういう人」にしか見えなかったです。


『クリーピー 偽りの隣人』予告編