僕がAKBのことを「アイドル」だと思わない理由
大学4年間はずっと日本語をこねくり回していたので、こういう類の話にはやたら過敏になってしまう人種です。
①「アイドル」ってなに?
そもそも「アイドル」の定義とは何か?という話をよく振られます。これは一元的に語ることのできない話で、「アイドル」という語がいったいどういう人たちのことを指すのか、という意味合いは時代によって変わっていきます。日本語的には(アイドルって日本語じゃないけど…)、特定の単語が時代とともに新しい性質を帯びる現象は決して珍しいことではないです。「萌える」とかそれの典型ですけど。なので「アイドル」とはどういう人たちを指すのかを詳しく知りたい人はWikipediaの「アイドル」項を見るのが一番手っ取り早いです。
ともかく近年これについてよく言われているのは、「アイドル≠アーティスト論」はもはや前時代的だということ。アイドルはその勃発の特性上「アイドルはアイドルであって、音楽そのものを売りにするアーティストではない」とする論調がこれまでは一般的でした。
「アイドル≠アーティスト論」が声高に提唱されていたのはだいたい90年代後半から00年代前半にかけてですが、そのころの音楽界におけるヒエラルキーには「アーティスト>アイドル」という不文律的なものがありました。要するに、アイドルは所詮ルックスが重視されているのであって、楽曲を重視するアーティストよりも音楽的には劣る存在である、ということです。
ところがアイドルを名乗るグループが余りにもたくさん生まれてきたために、今まで通りアイドルらしさだけをプッシュしていてもいけない、もっと楽曲にも力を入れていかなくてはいけない、という楽曲スポットライトのムーブメントが巻き起こります。
それ以降は、結局アイドルもアーティストも名乗っているものが違うだけで、どちらも楽曲にしっかり力を入れて活動している「音楽家」「アーティスト」でいいんじゃないかという流れにシフトしてきていて、これまでのように「アイドル」と「アーティスト」との間にあったジャンルの垣根が取り払われつつあるのが昨今です。
それでもこの二つを何かの定義で明確に分けろと言われたら、「握手会をするのがアイドル、しないのがアーティスト」ぐらいでしかもう分けられなくなってきてるのが現状です。
②じゃあ、AKBは「アイドル」か「アーティスト」かならどっちに入るんだ?
前述の握手会定義でいうなら、AKBは紛れもないアイドルです。
ですがこの握手会定義を取っ払った場合、AKBは「アイドル」でも「アーティスト」でもなく、『AKB』という固有のジャンルに属しているというのが僕の持論です。
その理由を端的に言うと、「AKBにしかできないことが多くなりすぎたから」です。
つい先日も、第8回総選挙の中間発表があって盛り上がってましたね。ぱるること島崎さんが17位、総監督横山さんが26位、いろいろあったとはいえ峰岸さんが65位、うって変わって若手勢が台頭する選抜メンバーと、明暗くっきり分かれる異様な開票結果でしたね。話逸れましたね。
③AKBにしかできないことってなんだ?
AKBグループが先駆け的にやり始めたことを、後追いでほかのアイドルがやっても二番煎じ扱いされるのは目に見えている。だからこそ、AKBグループはもう他のどのジャンルのグループとも比較することのできない存在になってしまった。その代表的なものが「候補生」「研究生」のシステム。
AKBをAKBたらしめているのがこのシステム。ハロプロはじめ、他の母体でもこのシステムを使っているところはあるけど、AKBグループのそれとは決定的に規模が違う。
いまやAKBグループには正規メンバーから候補生・研究生まで含めれば600人を超える人数が所属してます。秋元康さんの手によってこのシステムを構築したAKBグループは、それまでのアイドルグループのように一人の絶対的なセンター、絶対的なメンバーに頼るわけではなく、多種多様な選択肢を用意することを可能にしました。稲増龍夫さんの言葉を借りるとするなら、それまでのアイドルが「少品種大量生産」であったのに対して、AKBグループは「多品種少量生産」を可能にしたわけですね。ジャニーズや宝塚で成功しているパターンを、そのまま女性アイドル界に持ち込むことに成功したわけです。
これこそが、僕がAKBのことを「アイドル」ではなく「AKB」という特有のジャンルとして扱うべきだと思う大きな理由。同じジャンルに組み込んだところで、もうどことも比較できないし比べたところで勝てるわけがない。そりゃそうだよだって規模が違うもん!ってなってしまうわけなんですよ。
④なんなの?結局AKB嫌いなの?
好きです。
特に指原さんが好きなんです。HKTですけど。
何がどう好きかって言われるといろいろあるんですけど、あのあざとい感じというか、自分をどう売り込んでいけばいいかわかってる感じというんですかね。自分を受け入れてくれる層の存在を自分で把握してて、そこに向けてのセルフプロデュースがすごいっていう。そのへんのしたたかさ、周到さは見習いたいと思いますね。あと同い年ですからね。
セルフもそうなんですけど、HKTそのもののプロデュース力もすごくて。去年のTIFだったと思うんですけど、HKTのステージのセットリストを指原さんが組んでたらしいんですね。で、明らかにヲタが消化不良というか、不完全燃焼になるようなセトリをわざと組んで、予定調和かのようにアンコールを誘発させるっていう出来事があったんですよ。
夏フェスで、しかもトリでもなんでもないのにアンコールって、ふつうあり得ないですよ。そのありえないことをHKTはやってのけた!夏フェスのステージでアンコールさせちゃった!っていう既成事実を作ってグループの株を上げるために自ら不完全燃焼なセトリを作るっていう、そこのあざとさ・周到さ。マジで推せる。好きです。