楽曲評論家クソDDのアイドル三十七房

アイドルの話しかしません。

追悼

2017年2月8日、

私立恵比寿中学のメンバーである松野莉奈さんが

18歳の若さで急逝されました。

 

 

今日そのニュースを見て、ぶっちゃけ意味が分かりませんでした。

だって、昨日もインスタ更新してたじゃん。

こないだも普通の顔でニコ生出てたじゃん。

なんで急にそんなことになるの?嘘でしょ?

っていうのが、ずっと頭の中をグルグルしてる一日でした。

 

僕は古参でも何でもないですよ。

つい数か月前にベスト盤の衝動買いで出会ったエビ中が、

今や僕にとっては押しも押されぬ生きる希望でした。

 

突発性難聴を抱えたひなたが気合で去年のツアーを回りきって、

かと思えば今度はぽーちゃんがバセドウ病

美怜ちゃんのあれこれもあったりして、

なんか大変だなエビ中とは思ってたけど、

こんなのってないよ。さすがにやりすぎだよ神様。

 

まだ運営さんからの発表は何もないみたいですが、

どういう形になろうと僕は運営さん・メンバーの判断を

100%尊重するべきだと思っています。

松野さんの意志を汲んで、7人でも今後も続けてほしいっていう想いもあるし、

「今の8人がベストメンバーだ」って、++であんなに嬉しそうに、満面の笑みで言ってた松野さん本人がいない状況のエビ中に違和感があるのも事実だし。

新参者の僕ですらこんな思いをしているのに、

古参のファミリーさんや運営さん・スタッフさん、

ましてや家族以上に同じ時間を過ごしてきたであろうメンバーが

どれだけ言葉にし難い想いをしているか、僕には想像できません。

 

こんな形での別れなんて考えてもいなかった。

年末の代々木体育館行けなかったから、早く現場に行きたいと思って

今年の春ツアーのチケット、いの一番に取ったんだよ。

やっとエビ中8人に会える!観れるんだ!と思ってたのに、

神様マジでこんなのってないよ。あんまりだよ。

 

とかっていうのをいろいろ考えながらエビ中の曲を聴いていたら、

本当にいろいろ考えてしまって。他のみんなも悲しんでるし。

でもこういう時僕らはメンバーやスタッフさんに対して

何もしてあげられないわけだから、

せめて松野さんの生きたかった明日を、しっかり生きようと思います。

 

どんなに頑張っていても あなたが見ていてくれなきゃ

いつまでも踏み出せなかった ずっとありがとう

だから私はあなたのこと 永遠に忘れないから

あなたも私を心の隅に置いてて

好きな人に囲まれながら 旅は終わらない

        私立恵比寿中学 - ポップコーントーン

 

心からご冥福をお祈りします。

 

りななん、ありがとう。おつかれさま。

またね。

f:id:b115058:20170208203646j:plain

エクストラショットノンホイップキャラメルプディングマキアート

甘くしたいのか苦くしたいのかどっちなんだ。

f:id:b115058:20170126014803j:plain

 私立恵比寿中学の舞台演劇作品、「シアターシュリンプ」の第1作目。2作目の「ガールズビジネスサテライト」を経て、今年の春に第3作目の上映が発表されたシアターシュリンプ。

アイドルの演劇作品って結構いっぱいあるけど、往々にしてなんか「うん…」って感じのものが多い。メンバーの一人がドラマに出演とかっていうのとは違って、グループ全員が主演みたいな扱いの演劇作品はだいたいが微妙。ももクロの「幕が上がる」はおもしろかったけど、でんぱ組の「白魔女学園」や欅坂46の「徳山大五郎を誰が殺したか?」とか。

駄作だとかそういうことではなくて、アイドルグループのメンバーが全員出演・主演って形はちょっと問題があると思うんだ。だってでんぱ組はでんぱ組なわけだし欅坂46欅坂46なわけで、「アイドル」としての印象が強すぎるがあまり「自分ではない誰かを演じる」ということにとことん不向きだと思うし、その演技の裏に「あぁ、もがちゃん頑張って演技してんなー」とか「平手さんすごいなー」みたいな実体としてのアイドルが演技の向こう側に見え透いてしまうこと自体が問題だと思う。

f:id:b115058:20170126020814j:plain

だってこんなの、役を演じてる感ないもん。普通にでんぱ組のティザーっぽいもん。えいたそなんかむしろいつも以上にいつも通りのえいたそじゃん。

 

まあ、良くも悪くもそんな感じなんだろうと思って見てみたこの「エクストラショットノンホイップキャラメルプディングマキアート」。長え。「こちら葛飾区亀有公園前派出所」をはるかに凌駕する語感。「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」とタメを張る。演出はあの世からキューブリックにやってもらおう。

f:id:b115058:20170126020939p:plain

 

新参者ながらにいろんなエビ中の作品に目を通してメンバーの個性とかいろいろ把握してるつもりではあるし、その前提で見たにもかかわらず全く演技の裏にアイドルの実体が見え透いてこない。こんな言い方で伝わるのかな。要はエビ中メンバー全員シャレになんないレベルで実は演技が上手い。

エビ中で演技するってなったら柏木ひなたの一強だと思ってたけど実は全員振り切れ感がすごい。8人全員、元のエビ中メンバーのイメージをいい意味でうまく残しつつ演じることに徹している。この感覚は多分、ある程度エビ中に関する知識がある人ならわかってもらえると思うけど、今までのアイドル演劇作品にはない新鮮さと完成度の高さがあった。相当オススメ。

 

f:id:b115058:20170126021405j:plain

 

特に小林・中山の最年少コンビ。この2人は喜劇やらせたらアイドル界で右に出る者はいないんじゃないかと思えるレベルで上手い。中山さんはめっちゃ滑舌悪いけど身振り手振りがナチュラルだし表情も豊かで、こないだ観た「ディストラクション・ベイビーズ」の柳楽優弥さながらの怪物演技が垣間見える。

小林さんもセリフ間の間の取り方とか、立て板に水の如く畳みかけるツッコミがキレキレ。おどおどした役回りなんだけどそれを喋っていない時の所作や表情でめちゃめちゃ忠実に演じ切ってる。

 

ちなみに脚本・演出してる土屋亮一さんが所属してるシベリア少女鉄道、これもまたおもしろい。あらゆるところに伏線をちりばめて上手いこと回収しながら気づいたら全然違う話になっているという、コミックミステリーというか叙述コミック的な本が多くて好き。こういうの見てると観劇おじさんになりそう。上映中にメモとか取っちゃいそう。

 

そんなシアターシュリンプの第3回公演「シー・イズ・ノット・ポストオフィス」が3月から東京と神戸で上映。マジのガチで神戸あたり行こうかな~。

ともかくシアターシュリンプの「エクストラショットノンホイップにして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」、非常におすすめです。ん? 

 

 

損益分岐点を重視するアイドル、里咲りさ

この人、アイドルにして、作詞家にして、作曲家にして、社長。

 

もう、日常に寄り添いすぎ。4シーズン問わず使える。今みんなが頼りっぱなしのこたつより全然汎用性高い。夏場の扇風機とか冷房よりも万能。万能ネギより遥かに可動域も守備範囲も広い。

かといって押しつけがましくなく、意識的に必要視なんてしていないはずなのに、気づけば彼女の曲なしで生活することが困難になってくる。でもそれを自覚している自分。これって結構すごいことだと思う。

だってそうでしょ、みんな毎日お風呂入りながら「ああ、これがなかったら俺って毎日臭えんだな」とか、パソコン使いながら「いま電力使ってるけど、これがなかったら生活成り立たねえよなあ」とか思わないでしょ。みんなだいたいなくなってから気づくんだよ。SMAPみたいなもんだよ。一番好きなメンバーは森君です。

 

f:id:b115058:20170122224826j:plain

この人、18歳でシンガーソングライターとしてステージに立った時に「お金が入ってくる道がまったく見えない」という理由で早々に身を引いたあげく、再受験して大学に合格したのに入学金の金額を見て「事業始められるじゃん」という理由で入学を辞退し、今やフローエンターテイメントというレーベルを運営する個人事業主。いわゆる社長。だから通称「しゃちょー」。もともとアイドルとか音楽家になるより一直線に経営者ロード突っ走ったほうが早かった気もする。孫さんとかホリエモンがギターかついでキャパ100人ぐらいの箱でライブしてるようなもん。損得勘定の鬼。

 

そんな守銭奴、里咲りさの曲がこちら。

バカクソめっちゃいい。踊れるメロウソング。

事実、俺はこの曲を聴きながらじゃないと寝れない。違う曲だと寝れなくなる。1曲リピートで延々と流してないと寝れない。そんな生活がもう半年以上続いてる。

しゃちょーと実際に会ってこの曲についていろいろ聞いてみたこともある。人の歩く速さの平均値でBPMをとってるらしく、だから入眠効果あるのかもね!と言ってた。ちなみにこのCDの歌詞カードには(※その他の部分/デタラメ言語)とかいてある。PVの字幕とも全然違うしほんとにデタラメなの?って聞いたらそれは内緒、みたいなこといわれたのでイラッとしてチェキ撮った。

f:id:b115058:20170122221804j:plain

 

とにかくやることなすこと何かと一癖あるくせにスルー出来ない曲を出してくる。最近になって「あ、ピンチ。」っていうユニットを始めたんだけどこの曲もヤバい。

強大な電子の力で脳が殴られる音が聞こえる。「ピキューン」って音が聞こえる。

立場上強いられる部分はあるだろうが、いろんな角度からの「アイドル活動」というものの捉え方が実にフレキシブルな人だと思う。先週なんか「フローエンターテイメント就業体験」っていうイベントやってたもん。オタをこき使う気しかないもん。でもそういう斬新さがたまらなく良い。俺がアイドル好きな理由を常に提供し続けてくれる数少ない一人。俺が東京に居たら迷わず参加してる。

去年だしたアルバムのタイトルは「売れるまで待てない」。俺のほうが待てないよ。なぜ里咲りさが売れないんだ。こんなに先進的で現実的なアイドルはそう他にはいない。非日常の多幸感を提供するはずのアイドルが、「非」じゃない自分の日常にすっぽりと落ち着いてしまうこの感覚。ほかのアイドルではなかなか味わえない。

 

ぜひ里咲りさの曲を聴いて、CDを買って、グッズを買って、みんなでZepp Divercityに行こう。

目指せ、損益分岐点SOLD OUT。

 

「マイティブラザーズXX」、ヤバくない?

※1/22 追記

仮面ライダーパラドクス パズル&ファイターゲーマーレベル50とかいうとんでもねえ奴が出てきたので、この記事はなかったことにしてください。

 

 

 

             f:id:b115058:20170111212627j:plain

俺の語彙も死ぬわ。

おそらく、俺が知りうる限り、最強にヤバい強化形態が出てきた。

 

みんなエグゼイド観てる?3話時点では凡作と言ったが、貴利矢さんが死んだ(消滅した?)時点で超傑作にレベルアップした。バクソウバーイク!

それで思ったけど、俺って中心格のライダーが序盤でフェードアウトする展開大好きなんだな。カブトの完全調和でおなじみ矢車さんとか。

f:id:b115058:20170111211932j:plain

 

ちなみにエグゼイドをあまり見ていない人のために簡単に説明しておくと、ゲームがテーマの今回の仮面ライダーは「ガシャット」と呼ばれるゲームソフト的なものをベルトに挿し込むことで変身する。

このガシャットは一度に2本までベルトに挿すことができて、その組み合わせ次第でどんな種類の・レベルいくつのライダーに変身できるかが変わる。例えば、主人公が使うガシャットは「マイティアクションX」で、これを使うと最大レベル2までの「アクションゲーマー」に変身できる。「マイティアクションX」と「ドラゴナイトハンターZ」を2本同時に使うと、レベル5の「ハンターアクションゲーマー」に変身できる。

f:id:b115058:20170111212012j:plain  f:id:b115058:20170111212030j:plain

(エグゼイド アクションゲーマーレベル2 ← / →エグゼイド ハンターアクションゲーマーレベル5)

要するに挿すガシャットの種類やガシャットの組み合わせによって自分を強化していくスタイルなわけだ。近年で言うとフォーゼに近いシステムになるのかな。

 

ところが、録画してた第13話をさっき見たところとんでもねえガシャットが現れた。それが「マイティブラザーズXX(ダブルエックス)」というガシャット。放送開始前から誰もが予測してた「2本分のスペースに1本挿しする特大サイズのガシャット」が遂に登場したんだが、こいつで変身できるダブルアクションゲーマーレベルXXの能力がパない。エグい。ヤバい。

f:id:b115058:20170111210751j:plain

その能力がこれ。「2人になる」。

ちなみに分身だとか幻影みたいな形で自分が複数に増えるパターンの技はいままでにも存在した。例えばナイトは「トリックベント」、ディケイドは「イリュージョン」のカードを使って分身してたし、オーズのガタキリバはもう数えきれないぐらいに分身する。

しかしそれも効果時間内のみの話で、ダブルアクションゲーマーレベルXXのヤバいところは、「基本形態が2人」というとこで、実はどんな強化形態よりもこれが一番ヤバいんじゃないかと思う。

 

過去平成ライダーの強化形態パターンを振り返ってみたとき、おおよそ2つのパターンに分類される。「地の力がめっちゃ強くなるパターン」と「そのフォームでしかできない特殊なことができるようになるパターン」の2つだ。

ほとんどの最強形態は前者に振り分けられる。圧倒的な攻撃力と防御力とスピードと特殊な武器と、あわよくば「今までのフォームの武器や必殺技を全部使える」みたいな反則めいた特徴を持ち合わせているにもかかわらず全く劇中では使用しない。そんな最強形態がほとんど。

後者に振り分けられる形態は数少ない。カブトのハイパービートルとディケイドのコンプリート、電王のライナーぐらいのもんだろう。

ハイパービートル…過去への時間移動ができる

コンプリート…平成1期ライダーの最強形態を呼び出して行使することができる

ライナー…イマジンが憑依しない良太郎が変身すると基本的にはめちゃめちゃ弱いため、イマジンたちと会話してサポートを受けることができる

 で、ここに出てきたダブルアクションゲーマーの能力、「2人になる」。圧勝。

まだ劇中でも出てきてすぐなので詳しい情報はあまりわからないにしろ、XX、要するにレベルX(=レベル10)のライダーが2人になるわけだ。今まで出てきた一番強いやつでも、ゲンムのゾンビゲーマーレベルXがMAXだったんだが、それと同レベルのやつが2人がかりで戦えることになる。これがどんだけ強いか冷静に考えるとスゴい。

広辞苑で「数の暴力」って引いたら「マイティブラザーズXX」って出てくると思うよ。これぞまさに数の暴力。同じ力のやつが3人集まって1人と2人に分かれたとき、1人のほうが勝つ確率は限りなくゼロに等しい。

メッシ2人対メッシ1人のハーフコート勝負で1人が勝つほうに賭けるやつは絶対競馬とか弱い。競艇も弱い。蛭子さんなら絶対「カタいね」って言って2人のほうに賭ける。オッズがグンと下がる。「この場はインが極端に強いからね。1号艇松井のイン逃げ速攻で決まりだよね」とか言ってそう。

 

とりあえず次回以降、どんだけ強いのかじっくり見させてもらいたい。しかしこうなると、多分エグゼイドの最強形態はまだあとに出てくるだろうけど、ダブルアクションゲーマーレベルXXを倒すことになるバグスターがいったいどれだけ強いのかが気になる。

ていうか、仮面ライダーって子供向けだよね?数の暴力でゴリ押していいの?倫理的に大丈夫?東映BPOからなんかこないか心配だよ。

あと、貴利矢さん。頼むから32話あたりで戻ってきてくれ。できればちょっとやさぐれて戻ってきてくれ。「どうせ俺なんか」とか言いつつ謎の子分数人引き連れて戻ってきてくれたら今後数十年はエグゼイド観るから。頼む。

2017年も聴きたい、2016年の名盤5選

f:id:b115058:20170107024958p:plain

2016年のアイドル楽曲大賞の結果発表があり、トップ10に欅坂46が3曲もランクインしてくるという超絶主人公展開にちょっと胸焼けがしている今日この頃。まー貫禄あるなというかいくら何でもデビューした年でいきなりこんな事態になるとはだれも想像してなかっただろう。

サイレントマジョリティー」はどっかに食い込んでくるだろうとは思ってたけど「二人セゾン」まで3位に入ってくるとはまさに驚異的。ついこないだリリースされたばっかりじゃないか。27歳で遅咲きデビューの力士が九州場所で全勝優勝みたいな話だぞ。まさかの幕下付け出しデビュー。智ノ花か。絶対NEWS ZEROがほっとかねーよ。

個人的な楽曲大賞をトップ10で考えてもみたがどうやっても絞り込めなかった。マジで2,3週間それのことで頭いっぱいにしてみても決められなかった。お母さんが晩ご飯の献立決めるときの気持ちがちょっとだけ分かった気がする。あっちを立てればこっちが立たず。メンチもいいしバーグもいい。緑黄色野菜も取り入れないと…

 

そんなわけで、今回は僕が考える「2017年も聴きたい、2016年の名盤」をピックアップしていこうかと思う。こういうときクローズアップされるのは一撃必殺のライブ映えする曲だったりするパターンが多いけど、往々にしてそういう曲はヘビロテしていると飽きる。スルメも美味いが飽きがくる。良い語呂だ。火曜10時から新垣結衣主演でドラマ化してみたい語感だ。

本当に染みる曲っていうのは時間が経ってから聴いても色褪せがない。むしろ時間が経った後のほうが、初めて聴いた時の情景とか心象風景がリアルに焼き付いている分余計染みるもんだ。そういう曲は誰にでもあると思う。僕の場合BUMP OF CHICKENの「オンリーロンリーグローリー」を聴くと、未だに小学生のころ家族旅行で行った香川県のホテルで過ごした夜を思い出す。行きに買ったばかりの「ユグドラシル」とポータブルCDプレイヤーを握りしめて聴いていたことをついさっきのように思い出せる。

というわけで、「今年も聴きたい、去年のアルバム」をチョイスしてみたい。

 

ティー・フォー・スリー - Negicco

去年出たNegicco3枚目のアルバム。

1回紹介したこともあるけど、これぞまさにウェルメイド。ソウルやファンク、ジャズにフュージョン、あらゆるジャンルの楽曲テイストを取り入れつつもそれをNegiccoカラーに染め上げてしまっている名盤中の名盤。

これは多分誰もにうなずいてもらえるチョイスだと思うぞ。2017年どころか今後10年20年経っても視聴に堪えうるクオリティの1枚。アイドルヲタクでない人でも、音楽が多少なりとも好きであれば持っておいて損はない。

 

KiLLER BiSH - BiSH

2016年下半期はまさにBiSHのものだったと言えるはず。

この「オーケストラ」がMV化・音源化されてからというもの、未だにこの曲の話をしている人が絶えない。緻密かつ精巧に作り上げられたクラシカルサウンドと松隈サウンドのアンサンブルの美しさ、そこに上乗せされるアイナ・ジ・エンドの声。この曲に心惹かれ、BiSHに入ってきた新規も少なくない。

アイドルヲタクは何かと「今日の現場優勝!」とか「夢アド優勝だったわ」とか「優勝」という単語を使いたがるが、これこそまさに「優勝」というワードを使うに相応しい曲だと思う。

とかくこの「オーケストラ」に注目は一点集中しがちだが、「KiLLER BiSH」には捨て曲がマジでない。13曲全部マジ。本当本気。1周回ってこれこそがBiSHのパンクスなんだろう。2月の福岡行きます。

 

穴空 - 私立恵比寿中学

ここ最近めっきりエビ中にハマっているから上げるわけでもなく、単純に素晴らしい名盤だと思う。ハマるまでノーマークだった俺こそがギルティ。

「穴空」と書いて「アナーキー」と読む。言い得てまさに妙、これぞ無秩序。とにかく畑の違ういろんなトラックメイカーに提供してもらった曲で多種多様な表情を見せる。リードトラックの「ゼッテーアナーキー」を提供したのがUNICORNのABEDONというのもなんか絶妙にツボを押される。イントロだけ聞いたら完全に00年代のユニコーンなんだけどな。まんま「WAO!」じゃねーか。

 個人的には「ポップコーントーン」や「お願いジーザス」が好き。ちなみに前者はたむらぱんこと田村歩美さん提供、後者はフジファブリックの加藤さん提供。畑が違いすぎる。二期作にも程があるぞ。年に2回米の収穫ができそう。

 

アワー・ソングス - アイドルネッサンス

何回観ても美しい、このPV。

今年は飛躍の1年になったアイドルネッサンス。新メンバーが2名加入して8名になったり、妹分のグループ「AIS」が出来たりとせわしない1年だったように思う。このアルバムはまだ新メンバーが加入する前に出たものだが、これは今後一生聴けるだろ。いつ聞いても新鮮さがあるというか瑞々しさがあるというか。

今年はアイルネ初のオリジナル曲のリリースも予定されている。しかもトラックメイカーはBaseBallBearの小出さん。マジで俺のために作られるような曲。

新メンバー2人もやっとアイルネ本隊の雰囲気に慣れ始めたような感じがするので、今年も要注目。とにかく2枚目のアルバムはやく欲しいなー。去年夏以降新作のリリースがなかったので早めに。早めにね。

 

guidebook - lyrical school

度々ここでも話題に出すリリスク。今年の2月をもって現体制は解体、初期メンバー3名が脱退した後残った2人を中心に新体制で活動されることが発表された。

僕にとって拠り所たるアイドルって、寺嶋由芙だったり℃-uteだったり、リリスクだったりするところがあるのでこれは結構キツい。こないだ「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」っていう映画を観たんだけどなんかそれを見終わった時と同じ感情。得も言われぬ寂しさ。いろいろ思ったことはあるはずなのに結局「寂しい」という語彙でしか表現できない自分の語彙力喪失っぷりを客観視させられる罰ゲームじみた感情。

いやでも、本当良いアルバム。前作「SPOT」のときにうわーヤベエの出してきたなリリスク!って思ったけど負けじとも劣らず。「マジックアワー」が「ワンダーグラウンド」とタメを張ってるヤバさ。アルバムアートワークも凝ってて素晴らしい出来。

 

 

という個人的な5選。アイドル聴いてみたいけど何から手つければいいのかわからない!っていう方々の入り口にでも僭越ながらなれば幸いです。

ちなみに僕が選ぶ2016年アイドル楽曲大賞は、これです。

観客席に僕が映ってました。友人に指摘されて気が付きました。

見つけた方には金一封差し上げます。

『リップヴァンウィンクルの花嫁』を見てない人は2016年何してたの?

年に1本はこういう映画あるんですよ。2015年でいうと「シェフ ~3つ星フードトラック始めました~」とか。思い出しただけでキューバサンド食べながらジオタグ辿りたくなるわ。

 

その内のひとつが2016年は「貞子vs伽椰子」とかになるんだろうなーと個人的には思う。これについては以前ちゃんと話をしたつもりなのでこっちを読んでほしい。

これと同じぐらい僕が推したいのが、「リップヴァンウィンクルの花嫁」。

2016年の映画といえば、まあ誰が何と言おうと「君の名は。」を上げる人が大多数だろう。結局去年のうちに僕も3回見たし、別に全然面白い映画だと思うし単純にあれだけ売れたことそのものがすごい。

だって「もののけ姫」より売れたんだよこの映画。瀧くんと三葉の2人だけであっという間にサンを救えるレベル。アシタカじゃなくて瀧くんのプロポーズ受けたほうがサンも将来設計しやすいと思うぞ。腕に呪いを飼う男より新宿在住のイマドキ男子瀧くんのほうが絶対周りの女子からも「え~~いいな~~」って言ってもらえるよ。

 

しかし「君の名は。」が十分売れていてしかも面白い映画だということはもう大体の人が知っているので今更ここでプッシュしたところであんまり意味がないと思う。それよりも黒木華岩井俊二監督の素晴らしさを僕は声を大にして伝えたい。

f:id:b115058:20170104024204j:plain

結婚式の代理出席をなんでも屋に頼んだり浮気の罪を旦那になすりつけられたりよくわからない人と2人暮らしするだけで月給100万円とか、あらすじを説明してもよくわからないと思うのでもうとにかく観てほしい。

上映時間3時間ぐらいあったのに飽きさせない展開のすばらしさと雰囲気作りに脱帽。3時間って結構長いと思うけど全然間延びがなかった。

ロード・オブ・ザ・リング」シリーズを監督する前のピーター・ジャクソンに見せてやりたい。ただただ長えよあんたの映画。おもしろいけど。

 

岩井俊二監督といえば現実と虚構の使い手というイメージがすごく強い。

花とアリス」の印象が強いからなのかもしれないけど、この作品の場合は特にそれが強烈に印象に残った。なんでも屋の安室と接する場面はリアルな現実で、一つ一つのものごとだったり言葉だったりにどぎついリアリティがある。

逆に同居人の真白さんと接するときは映像もなんだかぼやけてて、マジの虚構世界っぽい雰囲気がある。

f:id:b115058:20170105002713j:plainf:id:b115058:20170105002724j:plain

(何でも屋と接する「現実」の世界←→いかにも「虚構」っぽい真白さんとの同居部屋)

 

この二つの世界観を駆使して3時間の枠の中で人間ドラマともホラーともとれるやり取りがあれこれ展開されていく映画。

スリードもあったりちょっと叙述トリックっぽい要素もあったりして。これ以上に完成された物語を多少長尺とはいえ一つの枠の中に収めた映画はなかなかない。

 

タイトルの「リップ・ヴァン・ウィンクル」っていうのは、ワシントン・アーヴィングの小説でありそれに出てくる主人公の名前。

この小説はリップ・ヴァン・ウィンクルが迷い込んだ森の中で見知らぬ人と酒を飲んでいるうちに眠ってしまい、気が付いたら周りに誰もいなくなっていた挙句、家に帰ると20年もの時がたっていた」といういわゆる浦島太郎的なイマイチ学びのない物語だけど、この映画見終わったら「ああだからリップヴァンウィンクルなんだ」とか「予告編で被ってたあのマスクみたいなのってそういう意味か」ってすとんと腑に落ちる感覚がめっちゃいい。

気になった人は“映画を観る前に”読んでみてほしい。

短編集だからサクサク読めるよ。

スケッチ・ブック(上) (岩波文庫)

スケッチ・ブック(上) (岩波文庫)

 

 

黒木華さん大好きなんですよ。あの絶妙な幸の薄さ。薄すぎず濃すぎず。ちょうど1週間ごとに良いことと悪いことが交互に起こりそう。で自分の人生を振り返ってみた時に6:4ぐらいの比率で悪いことのほうが多かったなあ、やっぱり私ってそうなんだよなあとか苦笑しながら思っててほしい。

そして結婚相手も決して素敵すぎない男性を選んでほしい。そしてしっかり旦那に尽くしているにもかかわらず旦那に蔑ろにされつつ、それでも私はこの人と暮らしていくしかないんだと強い決意をするも数日ですぐ揺らいでほしい。なおこの物語はフィクションです。現実の黒木華さんには絶対に幸せになってほしい。

f:id:b115058:20170105010719j:plain

そんな最高に面白くもあり、怖くもあり、不思議な映画、「リップヴァンウィンクルの花嫁」。まだ見てない人は2017年どころか2016年に乗り遅れてると思う。今すぐBlu-rayを買って最高画質で観てくれ。

 

『アイドルに本当に必要なのは「笑顔」か「涙」か』論

エビ中にハマった。それはもうハマった。

f:id:b115058:20161206200909j:plain

先月出たこのベスト盤「中卒」「中辛」をほんの軽い気持ちで聴いてからというもの、今の僕の生活の9割はエビ中が占めている。ちなみに残りの1割は「じゃがりこ 塩とごま油味」に占められている。なんだアレ。革命だぞ。

 

正直ナメていた。ももクロにがっちりハマっていた2011~2012年ごろを最後に、スターダスト系列からは遠く離れたドルヲタ人生を送っていた。だからアイドルヲタクを自称しておきながらエビ中をまともに聴いたことがほとんどなかった。今思えばそんな自分をアイスピックでめった刺しにしたい。何で今まで聴いてこなかったんだ。アンテナが低すぎる。そんな低いアンテナなんか折ってしまえ。洗車の時に邪魔になるだけだ。

反省の証としてこの1週間の間に過去にリリースされたエビ中のCDを手あたり次第買いそろえて全曲聴いたしBlu-rayも3枚観た。

いろんな曲を何回も聴き込んでエビ中熱がキンキンに熱くなっている今の状況で「エビ中の何が良いか」なんてことを話し出したら時間も行もいくらあっても足りないので、今回は心の中に留めておくとして、今回はそんなエビ中Blu-rayや番組を見ていて感じたことについて考えたい。それが『アイドルに本当に必要なのは「笑顔」か「涙」か』論だ。

f:id:b115058:20161206202830j:plain

エビ中絡みの映像を見ていてやたら印象に残ったんだけど、エビ中はとにかくよく泣く。メンバー特性も多分にあるだろうがそれにしても何かにつけてよく泣く。当社比120%ぐらいで泣く。

誕生日をお祝いされたらすぐ泣くし、学校の卒業をお祝いされてもすぐ泣くし、音響監督にちょっと厳しいこと言われてもやっぱりすぐ泣くし、極めつけには「魚介類が食べられないメンバー(小林さん)を他のメンバーが気遣ってお寿司じゃなくてラーメンを食べに行った」というエピソードだけで「申し訳ない」と連呼しながら小林さんが泣く。

アイドルが大衆に振りまかないといけないのは「笑顔」であるというのが、いわゆる世間一般論な気がする。非日常の中にある多幸感を提供し続けることが使命というか、「笑顔」というものが包括するプラスのイメージを提供し続けなければいけない存在だった。それに対する「涙」というのは、どちらかといえばマイナス。正負で言えば負のエネルギーだ。「涙」が一元的に全て負であるとは言い切れないが、一般的に言えばそうである、はずだった。

ところが、そういう風潮が今となっては変わってしまった。アイドルは「笑顔」を振りまく存在であるべきというのは、もう前時代的な考え方なのかもしれない。2010年前後を境に、アイドルビジネスの根本的な売り出し方に変化が起きた。多様化するアイドル、キーワードになったのは「成長過程」というもの。

 

f:id:b115058:20161211222707p:plain

いかにヲタクにこう言わせるか、というのが当時から今までのアイドル戦国時代におけるポイントだったように思う。ここを強調するためにアイドル界で巻き起こってきたのが、アイドルの裏側・素の姿を惜しげもなく表へ出していこうという風潮だ。

2010年前後で最もバズったアイドルと言えば間違いなくももクロになるだろうが、彼女たちのライブ映像を収録したDVDには往々にしてバックステージドキュメントが収録されていた。個人的に特に印象的だったのが2011年冬のさいたまスーパーアリーナ。そのライブが収録されたDVDの特典映像で、ももクロにとって初となるさいたまスーパーアリーナの客席に1歩踏み入れた途端泣き崩れる5人の姿を、未だに鮮明に覚えているモノノフは少なくないと思う。

紅白出場を目標に掲げたももクロ結成当初、NHKホールの横の道端でストリートライブをやっていたころから追っかけている古参のモノノフなら、感涙を禁じ得ないシーンだろう。そうやってヲタクに対して「よくここまで頑張った」あるいは「ここまで連れてきてあげることができた」と思わせることがポイントだった。そしてその過程において、必要とされるのはキラキラした表舞台の「笑顔」よりも、裏舞台で見られる泥臭い「涙」だった。

そして時は流れ2016年。ももクロの妹分として同じスターダストプロモーションからデビューした私立恵比寿中学のDVD・Blu-rayにも当然もれなくバックステージドキュメントが収録されている。それだけにとどまらず、エビ中の場合は「EVERYTHING POINT」と銘打ったバックステージドキュメントだけの作品もリリースされている。もうすぐその第4弾が発売になる。もちろん予約済みだ。

 

こうやって考えると、今の時代でアイドルがビッグになっていく過程で必要なのは「笑顔」よりも「涙」なのではないかという説がかなり自分の中で有力視され始めた。ただ、「涙」を見せるためには「笑顔」が必要なのだ。負のイメージばかり押し付けられていても暑苦しいだけなので、上手く表舞台の「笑顔」で中和させてあげないといけない。

それ以前のアイドルにとっては表舞台で見せる「笑顔」こそが全てであり、裏舞台を見せるのはある種タブー視されてきた節があった。そこにあえて裏舞台での「涙」という土台を構築することで、その上に乗っかる「笑顔」をより強固に支え、ゆくゆくはアイドルのブランドイメージそのものを向上させてしまうというのが最近のアイドル、とりわけスターダスト界隈のメイン手法であり、自分はまんまとそれにハマってしまったわけだ。現にこれを書いている今、横のモニターで「EVERYTHING POINT3」を流しているが、「メンバーが一人体調不良で出演できない状況だが、シングル曲のライブ初披露をするかどうか」で議論するエビ中メンバーを見て泣いている。

 

だいぶ長くなってしまったが、結局今のアイドルというのはキラキラニコニコ歌って踊っていれば売れるという状況でもないらしい。だからと言って裏でぎゃんぎゃん泣いているところばっかり映しててもダメらしい。泣いてても、ステージでしっかりパフォーマンスができてないと意味がない。逆にステージ上で力を発揮できるグループの、裏舞台の「涙」というのは、ときに「笑顔」以上に強力な武器になる。

 

アイドルというのは、難しい。